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“嵐の前の騒がしさ”
 [ごーとう(@GOTOren)]

「みんな!…みんなごめんっ!」
 団員達が練習に勤しむテント内に響く声。副団長レン ハートノートが、その言葉の内容からは連想し難い、嬉々とした声音と表情で駆け込んでくる。そんな様子に団員達はざわめいた。驚いて目を丸くする者、好奇の目で振り返る者、集中を絶たれ怪訝な顔をする者。顔ぶれ鮮やかなサーカス団員達は、各々に反応を示した。
 レンはそんな団員達を眺めて、満足そうに頷きながら言う。
「やあ、ごめんね。すごい仕事取ってきちゃった!」
 出張帰りを示す、小さな体に似合わないそのスーツ姿。顔を見合わせる団員達を前に、レンは走った所為でやや乱れた襟元を正して続けた。
「ふふっ!呆れた顔しないで。ゴメンねってのは、皮肉じゃなくてね。大変なんだ。次の公演は、皆を危険に晒すことになる。本当にごめんなさい」
 頭を下げて言う割には、悪びれる様子も無くはしゃいでいる。
「…どういうことだよ。初演からどんな不吉な仕事を取ってきたっていうんだ?」
 訝しげに頭を痛ませる団長、不知火 零を筆頭に、団員達はそれぞれに顔色を変えた。
「初演にもってこいの大仕事だよ。盛大な幕開けにしようぜ」
 レンはそう言って一度大きく息をすると、途端に端正な口調で宣言する。
「我々の初の舞台は、独裁国家ペイズエイリエム。ご存知の通り政治が酷く混乱していて、あちこちでゲリラ的な内乱が絶えない国だ。一般客も勿論入れるが、主賓はペイゼル大統領!交渉の結果、派手好きで豪勢な彼のお眼鏡に叶ったようだよ。ペイゼル大統領は、生まれてこの方サーカスというものを見たことが無いそうだ。是非満足させてあげたい、そう思うよね。でも俺達と違って、ペイズエイリエム国民はそうじゃない。もう分かるね。次の公演は、テロの恰好の的!」
「いやはや、これはこれは。さすがは副団長。なかなかに大口の仕事を貰えたものですね。」
 椅子に腰掛けて団員達の練習を見守っていた支配人、ファスト・ヴルーヒゥルは、肩を竦めて苦笑いをしてみせる。「……色々と、裏はあるようですが?」
 やや威圧感のある、落ち着いた声色。裏なんてそんな、とレンはおどけて肩を竦め返す。
「へえぇ。初仕事だっていうのに、なかなか難易度の高そうな仕事じゃないか」
 同様に、呆れて苦笑いを零したのは猛獣使い、ガク・キュレン。相棒の猛獣を撫でながら、若干の皮肉を込めて言う。「まあ、副団長のレンががんばって見つけてくれた仕事なんだから、文句は言わないでやることにするよ」
「あらあら、心が広いのねガクくん。だけどレンくん、みーんな文句無しとはいかないのよお…」
 そんなガクの横。猛獣用の鞭を握り直しながら、大きく円らな一つ目を細めて怪しく笑うのは、同じく猛獣使いの、アイン・アン。「そんなお仕事もらってきて、レンくんはこれから追われる日々なのね…残念ねぇ…」
「ええっ!?最高の仕事じゃない?主賓!大統領!」
 レンは慌てて弁明する。アインは大統領、という言葉に、焦点を宙に浮かせた。
「…そうね、確かに…大統領さん!すごいかもお…!わ、わたし…ふああああ…」
 そのままアインの意識は何処へやら、ブツブツと自分の世界へ入っていく。
「…アイン?」今度はレンが目を細めて呆れる番だった。
「レンくん…謝らなくていいよ。レンくんは悪くないからね、お仕事とってきたんだもん…」
 道化師、柏田 朱音はぽそぽそと言う。レンは勢い良く振り返って満面の笑みで頷くと、お茶目にサムズアップした。「実は俺もそう思う。分かってるね」
「レンくんが折角とってきてくれた仕事だから頑張る…頑張るから、嫌わないでね…?」
 レンはサムズアップをそのままにもう一度頷く。すると、その背後から声が上がる。
「ねえ、でも、テロ、って…えっと、それって危ないこと、だよ、ね?僕…や、やっぱりちょっと、」
 視線を泳がせながら不安そうに口を開いた、手品師のスフレ。あまり乗り気ではなさそうに俯くと、長い角に下がる可愛らしい飾り旗がひらひらと揺れる。
 怯えているスフレを見ながら、歌姫のあとりは首を傾げた。
「てろ…??テロってなんですか?」
 そしてぱん、と両手を合わせると、無垢に笑う。
「よくわからないけど私、皆さんと一緒なら楽しみです!」
「う…う、ん、…こわ……く、っない!怖くない!が、がんばらなきゃ…ね、っ。副団長が持ってきたお仕事、だもん、ね」
 明るいあとりの態度につられるように、矢張り乗り気ではなさそうながらも、スフレも顔をあげた。
「うんっ、テロなんて全っ然怖くない!私が守ってあげるから、きっとみんな大丈夫だよっ!」
 世話好きなジャグラーのシュニーは、ぐっと拳を握って笑う。
「ふふ、心強いね。それに、もしなにかあっても、全責任は副団長が取るし。ね?」
 空中ブランコ、ルイ・エメ・ドゥ・デュルフォールは柔らかく紳士的に笑って見せつつ、ふふんと鼻で笑ってレンを見る。レンはぐ、と言葉を詰めて目を逸らした。
「ちょっとした抗争が起きるのは想定しておけってことだよな?」
手品師、テレサ・アメリアは眉をひそめて訊く。レンはそちらへ振り返ると、人差し指を口元に添えて、惚けた様に答える。「何も無いのが一番だよね。…表向きは?」
それを聞き、テレサははあ、とため息を吐いてから、クスと笑った。
「せっかくそういうのから足を洗ったのに。…まぁいいや。俺はレンのやりたいことを邪魔するやつを排除するだけだし。好きにしなよ。」
「~、~♪」
 一方、そんな騒ぎとはまるで無縁な様子で鼻歌を歌っていた夜の支配人、ロマンスカー。手も足も持たないその体を小さく揺らしながら、明後日の方向を見ている。
「やれやれ…俺は面倒なのは好きじゃないんだが。女性陣を危険には晒せないしな。」
 そう言いながら、蛇使い ザド・メデュームは、ロマンスカーの傾いたシルクハットをそっと直してやる。そして零とレンを見て、得意の含みのある笑みを浮かべた。「団長、レン、しっかり仕切れよ?」
「はあ。団員達に被害が及ばなければいいんだが…」
 ため息を漏らし、レンを見遣る零。しかし、どこか楽しそうだ。レンも視線を返し、目を合わせた二人は愉快そうににっと笑う。厄介事には自ら飛び込んでいくどころか、無ければ自ら引き起こしそうな性質の悪い悪戯っ子を、誰もがそこに二人見た。
 コツ、コツとヒールの音を響かせながら、火吹き マナがレンの傍へやってくる。妖艶なワインレッドの髪から尖った耳が覗き、同じく紅色の唇から鋭い牙が覗く。レンが顔を上げると、マナは指先でレンの汗を拭った。
「ふふ、折角のお仕事だもの。皆で刺激的な一日にしてあげましょう?」
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